2020
07.20

三輪バイクの概念を変えるニューカマー “NIKEN”[試乗]

Bike, Japanese

 子供の頃に三輪車によく乗っていた記憶がある。前輪にペダルが付いているやつだ。今時三輪車なんてタイのトゥクトゥクかトライク、ジャイロくらいしか思いつかないけれど、まさか大型バイクとして登場してくるとは思いもしなかった。ヤマハのNIKEN(ナイケン)である。正直トライクも含め三輪バイクなんてまったく興味がなかったし、心の奥底で「三輪なんてバイクとして認めない!」と思っていたのかも知れない。

 ちなみに今日本国内で三輪車に乗るのであれば、普通免許で乗れる「トライク」か、ホンダの「ジャイロキャノピー」くらいだろう。トライクは乗ったことがないのでよく分からないが、ジャイロキャノピーは昔バイトで良く乗っていた。乗り始めの頃はあの独特な操作感が苦手でぎこちなかったが、慣れてくると割とおもしろいと感じるようになった。なにより転倒しないというのがよかった。

ナイケンとの邂逅

 私がナイケンの存在を知ったのはとあるモトブロガーの納車動画だ。フロント二輪、リア一輪の三輪タイプで、かつゴツく独特なデザインが目を惹き、さらにヤマハMT-09の三気筒エンジンが乗っかっているというのも非常に興味が湧いた。何を隠そう私は無類の三気筒マニアである。三気筒と言えばヤマハのMTシリーズかトライアンフの二択くらいだが、昔からの憧れだったトライアンフを選択した。少し話しが脱線したが、率直に思った感想は「三輪車に三気筒…(笑)」であった。正直ナイケンは動画で見てお腹いっぱいだったが、今回縁あってナイケンGTを試乗することができたので簡単にレビューをしてみる。

 まず、またがった瞬間に思ったのが「めちゃくちゃ重い」である。公式スペックによると重量は263kg。私のストリートトリプルは180kg程度なので83kgも重い。そしてフロントが二輪なので重心が前にあり普通のバイクとかなり感覚が違うことに驚いた。こんなの転倒させたら絶対に起こせないという一抹の不安が脳裏をよぎる。しかもシート高は820mmと決して良いとはいえず、なおかつシート幅が広いので足つきが悪い。重量と相まって信号待ちでの停車が不安でならない。はっきりと言わせていただこう「怖い」と。念のためいっておくが、このバイクは三輪だが自立はしない。普通の二輪車のように転倒はする。

ナイケンから感じたヤマハの本気

 不安を抱えつつもさっそく走り出してみたが、最初に思ったのは「アレ?普通の二輪車じゃん」であった。走り出す前までは三輪ってどんな操作感なのだろうか? と身構えていたが、二輪車の感覚で乗れたことに驚きを隠せない。むしろフロントが二輪であるため二輪車以上に安定感があるほど。またがっていたときに感じた重さも走り出したら一切気にならない。コーナリングなども不安がなくヒュンヒュン回る三気筒エンジンと相まって、思わず笑ってしまうほど走るのが楽しいのだ。

 この走る楽しさの要因の一つにヤマハ独自の技術「LMWアッカーマン・ジオメトリ」がある。このナイケンはフロントタイヤと車体が一緒に傾く構造になっており二輪車特有の楽しさを再現している。バンク角は45°で頑張れば膝擦りもいけるかも。

 ナイケンには任意で制御の強さを選択できる「モード選択式トラクション・コントロール・システム」や、バックトルク発生時の挙動緩和や軽いクラッチ操作が可能となる「アシスト&スリッパークラッチ」、3つの走行モードが選べる「D-MODE」、「クルーズコントロールシステム」などを備える

ナイケンに試乗して感じたこと

 今回試乗してみて今までの考えが大いに間違っていたことに気が付かされた。ナイケンは間違いなくスポーティでアグレッシブなバイクである。ナイケンオーナーの皆様、誠に申し訳ございませんでした。

 強いて悪いところを挙げるとするならばやはり重さだろう。走り出してしまえばなんてことはないのだが、近場のコンビニに行ったり街中メインでの目的では非常に億劫になる。女性など身長が小さい人はかなり取り回しに苦労するはずだ。また三輪なので普通の二輪車と比べ消耗品が増えるため維持費も必然的に高くなる。個人的に1番気になったのが走行モードのスイッチだ。スイッチはクリック感がないので変更されたか感覚的に分かりにくい。慣れないうちはいちいちモニターで確認するのは非常にストレスだ。

 今回試乗したのは1日程度なので明確に評価することはできないが、三輪の概念を変える素晴らしいバイクであることに間違いないと感じた。フロント二輪による安定性により二輪車よりも安全であることは間違いないので、昨今増加傾向にあるリターンライダーの方にはオススメかもしれない。もし試乗する機会があれば1度乗ってみて欲しい。

■スペック

全長/全幅/全高:2,150mm/885mm/1,250mm〈1,425mm〉

シート高:820mm〈835mm〉

車両重量:263kg〈267kg〉

原動機種類:水冷直列三気筒・4ストローク・DOHC・4バルブ

総排気量:845cm3

最高出力:85kW(116PS)/10,000r/min

最大トルク:87N・m(8.9kgf・m)/8,500r/min

燃料タンク容量:18L(無鉛プレミアムガソリン指定)

NIKEN GT 1,980,000円

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